「支配」されない人間になるために

発する台詞がすべて「命令」、という類の人間がいる。といっても、常に語尾が「〜しろ」という台詞を吐くわけではない。

たとえば他人が自発的に動いて報告&提案したことについて、最終的に“俺様が命令して相手を動かした”ことに仕上げるために、「じゃあ、その件、よろしくね?」と言ってきたりする。ぃゃ、別にアンタにヨロシクされる事柄じゃないんですがねえ…、という感じ。

もうひとつよくあるパターンとして、他人の動きをどんどん先読みしてソフトに「ああしろ」「こうしろ」と言ってくる、というものがある。自分の意志で動いていても、何だか命令されて動いているような気分になってくる仕掛けだ。これを“心の動き”にまで踏み込まれて仕掛けられると心底イライラする。拒食症の女の子の気持ちってこんななのかな、って感じ。

さらにもっと単純な例としては、「〜して?」とお願い形式をとりながら「命令」してくるパターンがある。「お願い」する際に伴う「ちょっと申し訳ないけど…」という遠慮の感情が全く伴っていないのが特徴で、むしろ開口一番から「なんで俺様のお願いをきいてくれないわけ?」という謂れもない怒気がまじっていたりする。結局のところ、「お願い」という行動様式を表面上なぞっているだけで、全然「お願い」なんかしていないのだ。

人間として、何もかも「命令」されるというのは非常に息苦しく嫌でたまらない。「この支配からの卒業ぅうう〜♪」なんて歌もありましたが、気持ち分かるよ。でも、社会は学校のように“卒業”できません。というわけで、いかに「命令」をかわしていくか、テクを身に付けるべく日夜修練に励んでいる私なのです。目指せ、柳に風!!


以下に、私が現在までに習得したテクを列記します。



テク1“ツバメ返し”
こちらが報告&提案したことに対して、相手が“俺様が命令して相手を動かした”かのように話をすりかえてきたら(上記の例)、「ぇぇ、ご報告した通りです」とあくまでこちらが提案したことであることをもう一度確認する。「命令」状態を解除して、相手を「命令」した気分にさせないこと!

テク2“五里霧中”
「ぃゃぃゃまあまあ」と、もにょもにょ言って明確な答えを避ける。もしくは受け入れがたい「命令」には無言のままでいる。「ハイ」といったら「命令」を受けいれたことになると思え!

テク3“邪気”
心底腹が立ったときは、無言で怒りオーラを発する。たいてい「命令」好きな人間は小心者なので、「コイツは歯向かうこともある人間だ」と思わせれば「命令」してくる回数も減る。波風立たせず「コイツは歯向かうこともある」と思わせるには無言が一番。

テク4“頭のすげ替え”
キモイ人間からの「命令」だと思うからキモイ。「命令」されて納得いく立場の人間に改めて「命令」しなおしてもらう。どうだっていい同級生に言われてムカツクことも教師が言うなら渋々きくか、みたいな感じ。

テク5“神秘の乙女”
こちらのプライベート情報や、こちらの性格を把握されかねない経験談は出来うる限り秘匿する。明かせば明かすほど「俺はコイツを支配したぞ!」という悦楽を相手に与えることになる。向こうにこちらの情報を与えなければ、相手はこちらの動きを予測しづらくなり、こちらの行動を先読みされることも少なくなる。

テク6“火のないところに煙は立たない”
出来うる限り相手に話しかけない。接触を持てば持つほど、「命令」される機会が増えてしまう。相手が話しかけてきたときだけ、ニコニコして答えればよいのだ。

テク7“菩薩”
哀れむ。「かわいそうなヤツ」と思えば、「命令」される不愉快さも減る。しかし、このテクは限りなく危険なので出来うる限り避ける。「コイツは命令を受け入れる」と相手に勘違いさせかねない。


以上、周囲に「命令」好きな人間がいる方はご参考にしてみてください。