そうか、そういうことか(レイプの被害者と加害者)

全然脈絡ないんですけど、突然思い出したうえに何かを悟ったので一筆。

昔、レイプ話や痴漢話が話題にのぼったとき、私の母はレイプされたり痴漢されたりした女性に深く同情しつつも、私に「男をそそるような格好」をするなと必ず念押ししたものでした。これは裏を返せば、被害女性は「男をそそるような格好」をしていたからレイプされたり痴漢されたのだと言っているようなものなわけで、そのとき小学生〜中学生だった私は「それは違うんじゃないか?!」と本能的に憤慨し、必ず言い返したものだ。「どんな格好をしようと、レイプしたり痴漢した男が悪い!」と。

母の名誉のために付け加えておくと、もちろん母だって被害女性に落ち度があったと言いたかったわけではない。もし娘が被害女性のように傷つき辛い目に遭ってしまったら…と心配するあまり、被害に遭いそうな可能性を一切排除したかった故の発言だったのだろう。

だからといって上記のような発言は我が母ながら許せるはずがなく、高校生〜大学時代、私は母の口からそういう発言が出るたびに懇々と「それは違う」と反論し続けた。学齢が上がるにつれ、反論する際には論理的な根拠を付け加えたりするようになった結果、ついに母は「diamondwaterちゃん、お母さん間違ってたかも」と言うに至ったのであった…。もちろん私の反論のせいだけではなく、母自身が自らの体験をきっかけにどんどんその方面の勉強を重ね「開眼」するに至ったから、という裏もあった。

そもそも母は、親から「女だから」と男兄弟と差別されることもない環境で育ち、男尊女卑的発想には嫌悪を示し反発する女性である。その母がなぜあのようなことを言い続けたのか? それは前述したように母は男性のことを「男は女が肌を露出した格好をしたり、ハイヒールを履いたり、爪や唇を赤く染めれば欲情する生物だ」と考え、「なら、男をそそるような格好をしなければレイプや痴漢の被害に遭うこともなかろう」と考えたためだ。

しかし実はそのような考えそのものが、オトコ原理主義者(敢えて男性とは書かない。なぜならこの原理主義にあまり染まっていない男性も多数存在するからだ)の思う壺だったんだよね。

様々な調査研究によって、レイプが起こるシチュエーションっつーものは解明されつつある。もちろん通りすがりの女性の格好に欲情してレイプする脳タリンもいるだろう。でも多くは知り合いの男性が加害者であることが多い。デートレイプは有名だし、知り合いの男性が「トイレ貸して」といって被害者の自宅に入り込みレイプに及ぶというのもよくある話だという(雑誌『コスモポリタン』では「知り合いでも、いかなる状況でも、トイレは貸すな」と警告してあった…)。それも、ほとんどの場合、レイプは衝動的に行われるのではなく計画的に行われるという。「突発的」というのは被害者側の感覚であって、加害者としてはぜーんぜん突発的に欲情してるわけではないのである。それどころか「レイプは欲情の結果ではなく、力の誇示である」と考える研究者だっているのだ。

つまり、女性がどのような格好していようと、夜に一人歩きしようがしなかろうが、襲われるときは襲われるということだ。

上記ような知識はもう随分前に仕入れて知っていて、私が実践できるレイプ予防なんてのは、?常に警察に助けを求める手段を確保しておく(携帯を手で持ちながら歩く)、?被害にあったときに大きな声をあげられるように覚悟を決めておく(突発的すぎて、そして恐怖のあまり、大声を上げられなかったという被害者は多い)、?加害者が計画を立てる段階で被害者に選ばれないよう常日頃「簡単には言いなりにならないオンナ」のイメージを振りまく(もてなくなるけどw)、?トイレは貸さない(笑)、ということぐらいだな、と思っていたりした。で、ながーい間、上記のようなことは忘れていたのだが、今日突然思いついた。

「そうか、母はオトコに騙されていたのか」と。

母の父も、母の夫も、母の息子も、女性が過激な格好をしているからといって襲っちゃうような男性ではない(ムラムラくるにしても、ねw)。なのに「オトコはそういうもの」と思い込んでいたわけだ。つまり「加害者の言い分」を鵜呑みにしてたのだ。ぁーもー今さら気付いた。なんで今まで気付かなかったんだ。

女性が「オンナはこういうもの」と言ったら男性は信じるしかないだろう。自分では永遠に根本的な理解に至ることはできない事柄だからだ。逆もそう。男性が「オトコはこういうもの」と言ったら、女性は信じちゃうじゃないか!ぁーもー今さら気付いた!!

もう今日この時この瞬間から、私は「オトコはこういうもの」という言説は発信者が男性であったら70%、女性であったら50%信じないこととする。すべてはその人個人の主観であり、あるいは「言い訳」の可能性がある。女性の言説だって、それが客観的観察の結果なのか、オトコの言い訳を鵜呑みにして騙された結果なのか、分かったもんじゃないから。中身がオトコで見た目オンナな名誉男性的言論人がよく右翼雑誌に登場したりするじゃない? そこまで騙され切る女性は稀にしても、我が母のようなウッカリさんもいる。すべては客観的調査データおよび観察結果のみが真実を語るんだわ。

化かし合うのが前提であるならば、相手はうまく騙しつつ、相手には騙されないよう、精進あるのみだな!