私だけは知っている

我が家の近所にはかつて、かなり年季の入った下宿が2軒ありました。

アパートとか生優しい感じではなく、まさに下宿といった風情。雨ざらしで洗濯物が年中干しっぱなしになっていたり(よく見ると干されている内容は時たま変わっている)、屋根なしのベランダに置いてある洗濯機の土台のブロックが半ば崩壊しかかっていたり、表札に「苗」と書いてあったり(中国の方??)、まあとにかく「ここだけ戦後?」といった感じなのです。しかしついに、その2軒並んでいたうちの1軒「蘭英荘」が半年ほど前に取り壊しと相成り、ちょうど梅雨前あたりから新たなアパートの建設が始まったのでした。

ところでその工事の適当なことといったらありませんでした。基礎コンのうえに木材で土台を組んでいたのですが、梅雨の時期にも関わらずきちんと養生しないため土台が幾度も雨ざらしに。結果、土台は何やら怪しい色がつき柱にくらべ黒ずんだ色(緑色?)になっている始末。そしてそこから柱を組んだはいいものの、微妙に数センチ外にズレた状態でそのまま工事を続行、あれよあれよと壁が貼られて危ない内部は隠されていったのでした〜。耐震偽造云々いう前に、「仕事をきっちり」という職人自体が減っている日本。今度の関東大震災もかなりヤバイ状態になりそうだなあ、と一人ぞっとしたのでございました。。。

さて、今ではすっかり今時の木造アパートに生まれ変わった蘭英荘。そのうえ新しい名前は「シティハイツ」!! まー…今の姿からは当時の蘭英荘は誰も想像できまい、という感じにピカピカになりました。しかし私だけは忘れまい。あの土台の黒ずんだ緑色と、蘭英荘という素敵な名前を…。アーメン。